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最初の日
恋をしたことも無い人間がいきなり、恋をするなんて、バカバカしいと思う。そういうカップルは大抵、すぐに別れてしまう。
自分から近づいておいて、「やっぱり無理」と断る奴も多いからな。
勝手に期待して、勝手に損して、正直さ、俺的には人間関係はめんどくさい。
「お~い、何考えてんだ?」
「.....別に何も考えてない」
「嘘だな。俺の話、聞いてなかっただろ」
「はぁ.....」
勝手に勉強教わりに来てんのはあんただろ。好き勝手言ってんじゃねぇよ。
めんどくさい。本当にこういう、すぐ疑うタイプは嫌いだ。
「ま、俺が勝手に教わりたいだけだから、話聞きたくないならいいけどな」
「なら、消えてくれないか?こっちは一人でいたいんだ」
「え.....まさか、友達いねぇの?」
「嫌いなんだよ。人と関わるのが」
「ふ~ん。それなのに、学校に来てるんだ。偉いねぇ」
クソ、ムカつく。腹立つ。どっか消えてほしい。今すぐにでも消えてほしい。
いっその事、消したい。なんで、こんな奴が。しかも、後輩だし。同級生なら強く言えるが、歳下だから強く言って泣かせる訳にもいかない。
「そういえば、満鶴(みつる)さんってさスマホ持ってないの?」
「あ?なんでだよ」
「連絡先、交換したいだけ。部活のこととか聞きたいし、普通に話したい」
「..........部活の事なら聞いてもいいが、それ以外は聞くなよ」
「まぁ、いいよ。部活以外はこうして、会って聞けばいいからね」
教える気が失せてきた。
どうしよ.....ここで断ると対面の時、めんどくさそうだな。とりあえず、交換だけしておくか。
「ほら、連絡先」
「わあ!ありがとう!
あ、それとさ!もしも、何かあったら連絡してね!」
「ぜってぇ、なんもないから安心しろ」
「満鶴さん、モテるから。男子に!」
「嬉しくねぇよ」
そもそも、モテたことねぇよ。男子が俺を見るたびに騒いでるから、嫌いなんだろ。
嫌いのモテだろうな。モテると言うなら.....
「お前って、モテてるくせに彼女いねぇよな」
「え、あ~女ってめんどくさいからなぁ。付き合うなら、満鶴さんみたいな人がいい」
「気持ちわりぃこと言うな」
はぁ、何を言うかと思えば気持ち悪いな。
俺みたいなのがタイプって.....人と関わるのが嫌いな奴と付き合えるのかよ。
「.....満鶴さん、もし俺がさ、満鶴さんのこと好きって言ったらどうする?」
「.....は?何言ってんだ?」
笑えねぇ冗談だな.....とツッコミを入れようとしたが、こいつの目はガチだったから言えなかった。
「ま、答えが出たら教えてよ」
「..........」
「あ、そうそう。俺に助けを求める時は必ず名前を呼んでね..........『翔月(かける)』ってさ」
「あ、あぁ」
「そうしないと、誰が助けを求めてるのか分からないからね」
「わかった..........」
「んじゃ、またね。満鶴さん」
なんなんだ、あいつ.....いきなり告白してきて.....
それに、なんで俺はすぐに断らなかったのだろう。男と男が付き合うなんてありえねぇだろ。いや、男と女が付き合うのも俺的にはありえねぇけどさ..........
『ま、答えが出たら教えてよ』
答えなんて.....もう出てるよ。
出てるはずなのに.....なぜ、こんなにも苦しくなるんだ.....あいつの事は嫌いなのに、断ろうとしてるのに、それが嫌なのか.....?
俺はどうしたらいいんだ..........
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