レディ・ムラサキ 2

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息子に話すと驚かない。 「そだよ、最近はカラフルだよ、花模様もチェック、水玉も好きみたい」 と詳しい。 「家もますます凄くて、ドアは開けっぱなしでモノがあふれ出ていて、上の方に彼女が通れるくらいの隙間が有って、そこから、這い出てくるのを見たよ、初めて見た時ぎょっとしたけど。バイトの遅番の帰りにはよく見かける、完全に逸脱した」 と、平然と言った。 逸脱・・・ もう彼女はレディ・ムラサキというより、レディ・レインボー。 「ムラサキの時は寂しそうだったけど、レインボーになってからは楽しそうだよ」と息子は不思議な見解も述べた。 すると、夫も「そうかもね」と言った。 「家の中はきっとタヌキの巣穴みたいになってて、居心地がいいんじゃないかな」 「だね」 と息子と夫は真面目に話している。 そんなものかと私も思った。 ゴミの中にちょっとだけスペースが有って、旦那さんとの思い出の写真とか、拾って来た造花とか、可愛いティカップが飾ってあったりして。 『ジョゼと虎と魚たち』のジョゼの家みたいな感じ。 「もし人を愛しすぎて狂ったなら、それは美しいんじゃないの?」 息子が真顔で言った。(終わり)
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