そして彼はいなくなった

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「へへ、油断してる方が悪いのさー」  卓弥はそう言って笑いながら走り去った。  アイツは学食派だったっけ。  席を取り損ねて、立ち食いする羽目になればいい。 「もう、アイツってば……」  女子のお弁当に、いきなり手を出すなんてある?  「相変わらず仲いいねぇ」 「そう言うんじゃないから」 「はいはい、そうね」  何と余裕に満ちた笑みだろうか。  これだから親友は侮れないんだ。 「ったく、アイツ……。いつか天罰が下るわよ」  卓弥の邪悪なる所業にイラつく私にちょっと苦笑した後、明菜は私のお弁当箱の中身をじっと見つめた。
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