そして彼はいなくなった

　五時間目になっても、卓弥は戻ってこなかった。
　学食に辿り着く前に、腹痛を訴えて保健室に運び込まれたらしい。

　五時間目が終わると先生が卓弥の荷物を取りに来た。
　念のため病院に行くらしい。

「例のラッパのマーク的な奴でひとまずは収まったからな。まあ、死にはしないだろ」

　先生の適当な言葉がこれほど嬉しかった事は無い。

　それにしても、まさか私の料理がこれほどダメな物だったとは。
　初めて作ったとはいえ、酷すぎると言わざるを得ない。
　人一人を病院に送ったわけだから。
　それも、よりにもよって卓弥を。