辞めたい勇者と死にたい魔王

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けど、次の瞬間、剣は空中を切っただけで、私の目の前には魔王がいなかった。 「今はまだダメです」 声がして振り返ると後ろに魔王がいた。 「早く死にたいんですけどね……」 と悲しいような疲れた顔を魔王はした。 「勇者としては早く死んで欲しいのですけどね」 私はイライラした。魔王がいるせいで勇者なんかやっているのだ。 「だから僕は勇者を殺さないといけなくなる……」 と魔王は寂しそうな顔をしたが、私には怒りが込み上げてきた。 「そう。私の父を殺しといて今さら何を?」 「ああ、ごめんね。本当にいなくなりたい……」 「だったら、早く死んで」 私は他に良い倒し道具があるか袋の中をまさぐった。 「だから、今はまだダメなんです。もう少し待ってくれませんか。待ってくれないなら、あなたも殺します」 私は袋の中でいちを手裏剣をつかんだ。 「いったいどういうことなの。死にたいのに死なないって」
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