辞めたい勇者と死にたい魔王

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「それは、悪魔退治が必要だからです」 「悪魔退治?」 私は手裏剣を持つ手をやわらげた。 「そう。この世の悪や魔ものを無くさない限り、魔王は復活してしまうのです。だから、永久に死ぬために悪魔退治をしている今は死ねないのです……」 と魔王はため息をついた。 「そう、だったの」 と私もため息をついた。 魔王を殺して勇者から早く解放されたいのに、魔王を永久に葬るには悪魔退治が必要だったなんて、気が遠くなる話だ。けど… 「私にも手伝わせて下さい」 魔王はえっと言う顔で私を見た。 「悪魔退治、私もやります。少しでも早く魔王を葬りたいですし、負の連鎖も断ち切りたい」 ――もうこんな苦労は私の代で終わりにするべきだ。勇者家業なんて時代遅れだ。 私は魔王に手を差し伸べ、魔王もそれに応えて握手を交わした。 「ありがとう。早く死なせてね」 魔王は疲れた笑顔を見せると、いちを連絡先をとスマホを取り出したので、私もスマホを出した。 そして、なんとあろうことに、勇者の私のスマホに魔王の連絡先が登録されたのだ。今までこんな日が来るなんて考えたこともなかった。 「これで安心して悪魔退治できる。ちゃんとわかってくれる勇者に会えて良かったですよ」 じゃあまたねと魔王は去っていき、路地を抜けて人ごみの中に消えて行った。 私は大きなため息をついた。 早く勇者を辞めたいのに面倒くさいことが始まってしまった……。
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