辞めたい勇者と死にたい魔王

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私が困ったヤツに出会ったのは夏休みの最中。女子大生の私は街にあるバイト先に向かっていた。街中は人であふれ、仕事もあふれている。 暑さでバイトに行くのが面倒くさいなと思って歩いていると、人ごみの中に気が引かれる男性がいた。 30代くらいだろうか。Yシャツに黒いズボンをはいていて、ぱっとみ普通のサラリーマンだけど、死んだ顔をしていて髪もボサボサだった。そして…… 「あの、黒いオーラ出てますけど……」 信号待ちで気になって思わず聞いてみた。 「あ、君、見えるの?あ、気にしないで。じゃあね……」 「いや、気になります」 青信号になり歩き始めた男性に私はついていった。だって…… 「だって、私、勇者だから、困ってる人を見過ごせないんです」 男性は困ったように私を見た。そうだ、普通の人なら勇者なんて言う人は頭のおかしな人だと思うだろう。けど、正義感に勝った私は堂々と男性を見つめ返した。
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