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しばらく沈黙が続き私はそのまま箒とちりとりを片付ける。掃除ボックスの扉を閉めたその時だ。
「…黒森さん、いや夕日ちゃん!」
突然呼ばれて私は耳を疑った。苗字が聞こえたと思えば下の名前を呼ばれた。下の名前で呼ぶ人なんて同級生なら朝日くらいだ。
「…私?」
「そう、あなたよ夕日ちゃん」
阿紀さんは私の両肩をつかんで
「うちがあなたに楽しいとか悲しいとか教えてあげる!」
「え…?」
「だから友達になろ!」
「はい?」
何がなんだか私の頭が追いつかない。
けれど、なんだろか。心が暖かく感じる。何かに包まれたようなそんな暖かさだ。
だけど、それはすぐに冷めてしまった。
自分と共にいた人たちのことを思い出したのだ。
私はそっと阿紀さんの掴む手を持って放した。
「私といるとあなたが不幸になる…だから友達にはなれない」
そう断った。
これまで私の回りはいろんな人が不幸を見てる。なにもかも全部私がいたことで不幸を呼んだ。それに朝日も。
「ごめんなさい」
深々と頭を下げた。これ以上、誰かのあの顔を見るのが痛かった。
「そんなのわかんないよ」
「もう見たくない」
頭を上げて彼女を真っ直ぐみた。
「誰かが無理して笑ってるところなんて」
私はその顔が嫌だった。なんせその顔はあの人の…
すると阿紀さんは腰に手をあてて一つため息をつく。
「やっぱ夕日ちゃんは真面目過ぎる。ほんと生真面目だね」
その言葉はなんだかもやっとする。なんか、馬鹿にされてる…?
「不幸とか幸運とか人それぞれの運命じゃない?うちだっていろんな人の泣くところ見てきたし、不幸だって見てきた。だから気にしなくてもいいんだよ。ほら、人生山あり谷ありだし」
この人はなんか変わってる、というか、どこか似てるなと思った。
朝日とは流れで友達になったが、何を言っても「気にしない」と言っていた。どうして二人はそんなことが言えるのか、私は不思議でならなかった。
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