梅雨の日の午後

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「一緒に帰ろ」  下校準備を終えた阿紀さんがまだ片付けていた私に声をかける。 「え?」 「夕日ちゃん駅の方まで行くでしょ?」 「そうだけど」 「なら同じだね。うち電車だから」 「なんで知ってるの?」  阿紀さんはフフっと笑ってそのまま歩き出した。 「だって朝によく見かけるから」  私は追いかけた。 「朝に?」 「だって夕日ちゃんいつも電車の発車時間に駅の前を通るでしょう?」 「あの時間に出て行くのが調度いいから」 「やっぱそうだよね。あの時間が人一番多いもん」 「阿紀さんはもっと早く行くものだと思ってた」 「部活入ってないし行ってもやることないから」 「部活入ってないの?てっきり入ってるものだと…」 「…」  阿紀さんの手が止まった。何かあるのか呼んでみようかと思ったが、私はそこでやっと気づく。  昇降口まで来ていたのだ。おまけに靴も履き替えている。  (いつの間に…)  私の頭が停止している間に阿紀さんは履き替えたらしく、 「さ、帰ろ帰ろ」  と横を通り過ぎた。
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