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結局なんだかんだで湊も一緒に帰ることになっていた。
「君の両親が海外で暮らすことになったから夕日ちゃんの所に居候ね…」
「国内ならまだしもアメリカでやりたいことがあるとかないとか…家を売ることないだろ…」
「一人暮らしが心配だったんじゃない?」
「むしろ俺の方が馬鹿両親のことが心配だ」
湊は「親父はあーだの、母さんはこーだの」と余程両親のことを心配していた。
「で、さっきから一緒にいるけど名前は?」
今まで何も行ってこなかったからてっきり湊は阿紀さんのことを知ってるものだと思ってた。
というか私を挟んで普通に話してたよね。
「阿紀さん。私のクラスのクラス委員」
「阿紀日和です。よろしく」
「俺は白浜湊。夕日がお世話になってます」
「お世話というか今日はじめて話したんだけど、ね?」
私はコクりと頷く。
「放課後なんか残ってたのか?」
私に聞いてきたのでそのまま返した。
「掃除」
「掃除?また一人でやってたんじゃないよな?」
「はじめはね」
間髪入れずに湊は言う。
「お前、前にも言ったよな、何としてでも掃除させろって。争いにでもなったら俺が行くからって」
「私は何も言ってない」
「言わなきゃ駄目だろ…」
湊は頭を抱えた。この話はこれで何度目か、である。
「私も言ったんだけど、何故って聞き返されてしまって…まあ彼女達も悪いし…」
「お前、このままでいいのか?」
「問題ない」
私の返答に湊は深いため息をついて肩を下ろした。
「ほんと…全然わかんねぇ…」
「私も湊の言ってることがわからない」
「すみませんね、伝わらない日本語で」
駄目なんだろうということはわかる。だけどどうしていけないのかが答えが見つからない。そんな私もいけないんだ。
「私も悪いのは同じ。今度から言ってみる」
この言葉は口だけになってしまうとわかっていた。だけどこの場から切り抜けるにはそれしかなかった。
「じゃあ阿紀さんとはここで」
「あっ、もう駅だ」
学校の最寄り駅に着き、電車通学の阿紀さんとはここで別れることになる。
「じゃあね、夕日ちゃん。また明日」
「また明日」
阿紀さんは私に手を振る。私も振り返してそのまま帰路についた。
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