17人が本棚に入れています
本棚に追加
「夕日ちゃんって昔からあんな感じなの?」
阿紀は夕日の後ろ姿を見ながら聞いてくる。
「俺に聞くな。俺が知ってるのは中学からのあいつだけだ」
実際、俺が夕日と出会ったのは中学に入ってから。小学生以前のあいつのことはほとんど知らない。
「中学からってどういうこと?」
「小学校を卒業する前に伯母さんが夕日を引き取ったんだと。実際会ったのは中学の入学前なんだ」
「夕日ちゃんのご両親はもう居ないの?」
「伯母さんの話じゃ父親は小さい頃に亡くなっているらしいし卒業する前に母親も」
伯母さんから聞いたのはそれだけだった。夕日が両親とどう死に別れたのかは何も聞いてない。ただ、気になったのは…
「あいつ、昔のことは話さないし苗字を変えない理由とか伯母さんのことを母親じゃなくて名前呼びなのもわかんねぇ」
何度か聞こうとしたが何も言ってくれなかった。あいつにかける言葉に何が欠けているのだろうか。
「ありがとう。夕日ちゃんのことなんとなくだけど理解できた」
「無理に合わせなくていいんだぞ?」
「無理じゃない。うちは好きで夕日ちゃんに声をかけたんだから」
阿紀はさっきまで複雑な顔だったのに対して今は笑顔だった。
先を見ているような、彼女の目は輝いていた。
最初のコメントを投稿しよう!