孤立した少女の過去

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夕日side≫ それは梅雨が明ける初夏の頃。  「すっごいなぁ!!」  「!?」  幼い男の子が幼い私に聞いてきた。  「これ、どうやってつくったの?」  私の前にあるトンネルが掘られた大きな砂の山。  私はただひとりでつくっていたのだ。  「お、おやまを…つくって…穴を…空けて…」  「ぼくもやってみる!」  男の子はすぐに砂山を作って、トンネルを掘って行く。けれど、  「よし、これでできた!」  砂山は崩れ去った。  「「あ…」」  二人同時に崩れた砂山を眺める。  「簡単に作るからできるとおもったんだけどな。すごいね、そんなにきれいにできるなんて」  「え…それは…その…──!」  私は男の子の顔を見て、つい吹き出してしまった。  「どしたの?」  「ふふ…かお…どろどろ…」  さっきトンネルを掘っていたせいか、男の子の服や顔は泥まみれだ。  「あ…って、きみも服がどろどろだ!」  男の子は私の服を指差して言う。  「あなたよりマシだよ」  汚れ具合は断然男の子が汚れていた。気を取り直して服を見る。  「水で流せば取れるかな?」  「どうだろ?」  男の子は蛇口をひねってホースから水を出す。  はじめは手を洗って顔を洗って。服を洗おうと水を付けた。  「なんか広がった」  「もっと汚れたね」  二人でじっと汚れた服を見つめる。  「もうちょっとすれば取れるかも…」  男の子はたくさん水で濡らしてみた。さっきよりも薄くなったように見える。  「よし、いける!」  「え?」  男の子はホースを持つと水の出し口を萎めて水が私にかかった。  「うわっ?!」  「ごめん!…よい、しょっと!!!」  彼は重いホースの出し口を上に向けた。すると水が細かく降ってきた。  「──雨みたい…!!」  上から降ってくるその水はただの水道水なのに空は晴れているのに何処か天から降る雨のようだった。  「わーい!」  「雨だ雨だ!」  男の子が『雨』ならぬ『水』を降らせるとみんながみんな興奮して水遊びをはじめる。幼稚園の先生は怒っているようだったけど、みんな雨もどきに夢中で楽しかった。  男の子も、私も。  「そーいえば、なまえ、なんていうの?」  「え?」  「なまえ。聞いてなかったから」  「えっと…くろもり、ゆうひ…」  「ゆうひちゃんか。ぼくはほしうみひかる。よろしく」  はじめてできた友達は、男の子だった。
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