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1周年の記念日を迎える前に、梨沙は居なくなった。
この世から、居なくなった。
サークルでいつも梨沙が座っていた場所には、暫くのあいだ花が飾られていた。もう彼女は泣かないし、笑わない。
車の事故だった。詳しいことは直後に一度だけ聞いたけれど、よく覚えていない。それどころではなかった。
汐田さんを奪ってしまえたら、と思ったことはあったけれど、ここまで願った覚えはない。好きな人2人を心のどこかで応援していたのに、私の恋心は殺してしまっていたのに、死んでしまったのは梨沙だった。
汐田さんの憔悴は想像以上のものだった。休まずサークルに顔を出して無理に笑っているのが、むしろ痛々しい。悲しい、寂しいと泣いてくれた方が、いくらか慰めようがあったほどだ。
1人きり、部屋で梨沙との写真を眺めながら色々なことを思う。
鏡を並べて、梨沙のメイクを真似てみた。
やっぱり何もかもが違うけれど、纏う空気だけは彼女が戻ってくるような気がする。
急がないと。
汐田さんのなかで、梨沙が永遠になってしまう前に。
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