八郎江戸へ

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八郎江戸へ

   鉄石のじじが庄内の斉藤家を旅だってから約一年後、八郎の漠然としか浮かんでいなかった夢、それが薄らと形になり始めて来ます。  八郎がまず目指した夢、それは「江戸へ出て学者になりたい」  そんな夢が浮かびはじめた頃、八郎の学問の師でもあり、関所の役人でもあった畑田という者が、藩命により江戸へ行くことになったのです。  その噂を聞きつけた八郎は、嫌がる畑中師匠を無理矢理説き伏せ、江戸行きへ同行することを取り付けてしまうのです。  清河八郎って人物はとにかく強引で、自分の考えを押しつけ、言いくるめるのがうまい人物だったようで、最後の将軍慶喜の護衛役で槍の名手でもあった高橋泥舟は、後に八郎のことをこう語っています。 「清河は磊々落々たる人物で、書も上手で、文武の男でしたが、ひとたび口論になると自分の思う通り相手をやっつけてしまう、私はそれはいけないよ、といったのですが、性分ですから直りませんでした。そういう所から暗殺されたのでしょうな」  と、言っているように、八郎の人生は、論破により世に出て、論破により自らの寿命を短くさせてしまったのかもしれませんね。  
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