流れる水面のすぐ脇で

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流れる水面のすぐ脇で

無一文で養子先から家出した僕はストレス任せの暴食代まで 孝介におごってもらい彼のマンションへと徒歩で向かった。  春の柔らかな日差しを受けてキラキラとせせらぐ川べりを、 僕より身長が高い孝介が僕の歩幅に合わせて ゆっくりと並んで歩いてくれる。 自分のペースより遅く歩くのは大変なんだよと、 昔、高身長の別の友人から聞いたことがある。 普通ならぐんぐん進む背中を 僕が必死に追いかけなければならないのだろう。 「待って」とか「速いよ」とか 一言もいわずとも彼は自然とわかってくれる。 頬をなでる風向きに従って僕は自然と視線を流した。 「あ」  土手の下に視線を奪われて、 僕はピタリと立ち止まり孝介が「え?」と振り返った。 流れる水面のすぐ脇に一枚、 風に吹かれて今にも飛びそうになりながら 黒い毛並みがふわりと芝生にのっていた。
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