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王子様のお城
途中脇道にそれながらも孝介のマンションに辿り着き
促されるまま初めて見る彼の部屋にあがり込んで感銘を受けた。
美大で出会った頃から才能もあって洗練された秀麗なルックス。
一見クールそうでありながら栗色の長めの前髪の隙間から見える
切れ長の目はどんなときも穏やかに微笑んで僕を見守ってくれた。
単位が危ない時も、ご飯が食べられないときも、
いつも彼は僕の世話を焼いてくれた。
誰もが認める王子様で十年来の僕の知己。
きっと死ぬまで変わらない一生ものの僕の一番大切な人。
「孝介はいつも優しいね」
頭一つ分以上背が高い彼を見上げながら微笑むと
チラリと僕を見下ろして彼は目に被さる僕の黒い前髪に手を載せた。
ただでさえ伸びていた前髪が目を覆い視界不良になった向こうで彼が
「甘えんぼ」と囁いて口角をあげる。
甘いキャンディーを口に放り込まれた子供の様に
僕はふにゃりと微笑んで、
髪を掻きまわす彼の手にされるがままに存分に甘えた。
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