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世間が定める僕の価値
最初はもちろん傷付いた。
何も知らない癖にと子供の様に地団駄を踏み、
一人ひとりに生い立ちから養子になるまでの顛末を説明してまわろうかと腹に据えかねたほどの誹謗中傷だった。
だけどそれも日にち薬が麻痺させた。
知りもしないで騒ぎ立てるどうでもいい連中が定める僕の価値など
当てにもならず、これほどの世迷言はない。
そんなくだらないことに気を取られるのはもうやめた。
もうこの世の誰にどう思われようがどうだっていい。
絵画コンクールで賞をとって世間から認められれば
きっと母は喜んでくれた。
「よくがんばったね」と抱き締めてくれただろう。
早くその日を迎えたくてなりふり構わず働いて
ろくに食わず眠らずで描いた。
なのに母は死んでしまった。
母が生きているうちに僕は売れなかった。
間に合わなかった。
僕は少し大人になって、昔より少しひねくれた。
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