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「狩柳星子…って言えば、ピンとくる?」
狩柳…男の頭がまたもやフル回転した。
しかしなかなか思い出せない。
人違いじゃないのか?
男が自分の都合のよいように解釈しかけた瞬間、30年前の出来事が走馬灯のように蘇ってきた。
「狩柳って…俺が中学の時の…」
男のその一言を聞き、娘の表情が一瞬和らいだ。
「そう…いじめにいじめられて自殺した、あの狩柳星子」
「その妹が…」
「…そう。私なの」
娘が一歩、男に近づいた。
男のすぐ目の間に、いつも喫茶店から憧れの眼差しで見ていた、その顔があった。
しかし、その表情は冷酷そのものだった。
「姉の星子は、大人しい生徒だった。
別に何をしたわけじゃない。誰に迷惑かけたわけじゃない。
でも…なぜかターゲットにされた。
あなたの首謀でね」
娘は男の目を真っすぐに見ながら話した。
男は完全に、娘に飲まれていた。
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