15人が本棚に入れています
本棚に追加
目の前は花屋だった。
こんな地下街に花屋なんぞ、儲かるのか?
男はそんなことを思いながら、いつもこの場所でその花屋を見続けるのだが、男の疑問とは裏腹に花屋はまずまず繁盛していた。
この地下街はホテルにも直結しており、おそらくホテルで開かれているパーティーなどで捧げる花束を求める客が多いのだろう。
この瞬間にも、大きな花束を抱えた数名の女性が店から出てきた。
しかし男の目当ては、花ではない。
この店にいる1人の店員。
髪を後ろで1束に結び、前にエプロンを付けて、いつも笑顔で接客している。
色が白くやせ形だが、てきぱきと快活に働くその姿と明るさに、男は魅せられていた。
彼女を一目見たくて、彼は休日のほとんどをこの喫茶店で過ごしていた。
最初のコメントを投稿しよう!