輝かしい無関心

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 その日も現場での肉体労働を終え、地下鉄に乗り家へと帰宅していた。  いつもの駅で電車を降り、改札をくぐる。  遠方に見える眩しい光を感じながら、階段を上ろうとした。  そこですれ違った一人の男。  彼はその男を視界に捉えた瞬間、足を止めて凝視した。  ボロボロの服を身にまとい、紙袋をいくつも手に抱え、服には似合わないキャップを被ったその男は、真っすぐに地下街へと歩いていた。  髪は伸び放題に伸び、髭は胸元まで伸びている。  ふらふらと歩くその姿に男は釘付けになったが、他の人たちはそれに気づかないのか、全く気に留めることなく自分の目的地へと歩いていた。  あんな姿で…  彼は自分よりもみすぼらしい存在を見つけ、小さな自信を会得すると同時に、そんな男ですらあの地下街に行っている現実を目の当たりにして、強い衝撃を受けた。  彼は階段の前で踵を返し、ふらふらと歩いていくその男の後を追った。
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