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Ⅰ
耳に響くのはクラクションの音。なぜここでクラクションを鳴らすのかわからない。ドライバーの苛つきだけが手に取るようにわかる音に頭痛がくる。
軽い目眩の中、信号が青に変わった。一斉に人が動きだす。その波に押されるように、ゼブラの中に踏み出した。
後ろからぶつかられて倒れそうになる。よろめいた所に前から来た人の肩があたる。
「ちっ」
舌打ちをされたとき、ビジネスバッグのショルダーがずれた。
目眩と吐き気がしてくる。
でもこの信号が青の間にあちらまで渡りきらなければいけない。とにかく足を動かさなければ。
ふらつきながら一歩一歩進んでいると後ろから肘を持たれた。
「渡りきれ」
そう言われて肘を持った腕に押されるように、支えられるように進む。
後ろから肘を持ってくれた人のおかげで前から来る人たちにぶつかられることもなく、なんとかスクランブル交差点を渡りきることができた。
でも目眩と吐き気は治らない。
「大丈夫?」
肘を持ってくれた人の声。
「すいません。ありがとうございます」
そう言って振り返ったら、モヒカン……。
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