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 ジロジロ見てしまったのかな? 私。 「うん?」  珈琲をふたつ持って来たモヒカンタロウは、私の前に置くなり言った。  ちょっと俯いてから 「ありがとうございます」 とお礼を言う。 「いえいえ、あっ、この頭ダメ?」  いやモヒカンは大丈夫。首を振った。タロウの鼻輪も。 「似合ってます。鼻輪も似合ってました」  鼻輪が似合うは嬉しいのかな? 「あっ、セプタム好き?」  セプタム? 鼻輪のことかな。好きではない。人間がしてるのはどうかと思う。でも牛は子供の頃の懐かしい思い出。  あの頃は誰かの思考が入ってくることもなかった。どうしてこんな体になっちゃったんだろうと思うと、何故か悲しくなってしまった。 「あっ、セプタムはダメ?」  そんな彼の質問に咄嗟に答えてしまった、泣きそうになっているのを誤魔化すように。 「鼻輪、好きです。牛も好きです」 「……牛が好きなの? ステーキとか?」  タロウを食べないで!・・・共食い。 「唇のチェーンはそのキラキラの方が好きです」  少なくとも痛いことにはならない。 「あっそうなんだ。じゃあ次のステージはこっちにしようかな」  ステージ? あっ、あのTシャツ、フランケンシュタイン? 「フランケンズ……」  そこまで言って続きを忘れた。 「えっ? もしかしてファン?! わっ、めっちゃ嬉しい! あの日はコピーバンド聴きに行ったんだ! 来月だな、凱旋ライブ!」  モヒカンタロウはいきなり早口になった。凱旋ライブ? もしやバンドの名前か? フランケンシュタイン。 「よかったら、一緒に行きませんか?」  よくわからずにぼうっとしていたら、モヒカンタロウが両手を腿の上に置いて背筋を伸ばして言ってくれた。  さ、誘ってもらってる・・・のか?
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