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わたしは亮太の腕をキュッと握りしめた。
「じゃあ後で」
「うん」
わたしは亮太からいすを受け取り教室に入った。
「何かふたりの展開にわたしがドキドキしちゃうよ。でも大丈夫かな?」
小春ちゃんがいすに座ると、佐藤さん達女子グループが入って来て、目線を向けて不安そうな顔をした。
佐藤さんの女子グループがこっちに目線を向けて座るから、わたしは目をそらした。
「じゃあわたし体育祭実行委員の仕事に戻るね。先帰っていいからね」
「わかった。おつかれ」
佐藤さんに手を振ると、わたしに視線を戻してジッとわたしを見ている。
「宮本さんと葉月ってあやしいよね」
「あれはヤバいでしょ」
「地味子のくせに何してるかわからないよね」
「さとあみかわいそう。ひどいよね」
わたしはうつむいた。
「きっ気にしないで……麻衣ちゃん」
「うん」
宮本さんにわたしは嘘をついたし、亮太のこと隠していたからいわれて当然だけど、亮太を想う気持ちに悪意を向けられるのは意外と傷つく。
亮太と佐藤さんのほうがお似合いなのはわかる。
でも気持ちはおさえようとしておさえられるものじゃないから、何をいわれてもわたしの気持ちは変わらないよ。
「帰りの支度が終わったものから帰るように」そう担任の中村先生が入ってきていうから、ばらばらとみんなが帰っていく。
「じゃあ月曜日ね」
「じゃあね。小春ちゃん。月曜日楽しみにしてるね」
今にも雨が降りそうな空を眺めてわたしは亮太を待っていた。机に顔をふせていたら、体育祭実行委員の男子が戻ってきた。
「もう終わったの?」
「とっくに終わっているけど」
「そうなんだ……ありがとう」
わたしは佐藤さんの机に目を向けた。
佐藤さんもまだ……告白するっていっていたけど、まさか……。
「そんなことないよね」
わたしのひとりごとが暗くなっていく教室にむなしく響き渡った。
遅い……亮太も……佐藤さんも。
わたしは教室の入り口を見ながら机に顔をふせていると、足音が近づいてきた。
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