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ただなにもしないで見ているだけのわたしとは違って、佐藤さんは自分が出来ることで亮太に想いを伝えている。だからわたしに嫉妬する資格なんてないんだよね。
「ほら、席につけチャイム鳴ったぞ」
担任の中村先生が教室に入ってきて、ばらばらと皆が席につく。
「今日は来月にある体育祭のことを決めるぞ。クラス委員、前で進行頼むぞ」
「はい」
佐藤さんが前に出てきて先生から紙を受け取る。男子のクラス委員はじゃんけんで負けて無理やりやらされているから、やる気がないのか黒板に体育祭と文字を書き始めた。進行は佐藤さんらしい。
「今年の体育祭は1組赤、2組白、3組青、4組黄色組です。だからうちのクラスは黄色組になります」
黄色……佐藤さんの色。亮太は1組だから赤。太陽の色。
太陽にひまわり……朝、わたしが思っていた色と一緒。どこまでもふたりは一心同体そんな言葉が頭をよぎる。
「今年の体育祭は生徒主催で、すべて生徒が決めて準備をすすめることになりました。そこでクラスの体育祭実行委員なんだけど」
「さとあみでいいじゃん。陸上部だし」
「それならクラス委員2人がやればいいよ」
その言葉にいいと思うといいながら数名が拍手をする。
「俺はどうせおまけだろ?やなことばっかり押し付けるなよ」
もうひとりのクラス委員の男子が黒板に文字を書きながらつぶやいた。
「そんなことない。頼りにしているよ」
佐藤さんがやさしくさとすように男子の肩をポンと叩きながらいった。
「みんなの期待に応えて体育祭実行委員はクラス委員のわたし達がやります……いいよね?」
「……わかったよ」
拍手が起こる。それに答えるようにはにかみながら佐藤さんが頭を下げる。
本当に佐藤さんは、すごい人。
一瞬で空気を変えちゃうんだから。
「じゃああとはやりたい種目の候補をあげてください。それを元に体育祭実行委員会で話し合って決定します」
「ダンス」
「騎馬戦」
思い思いに意見を出しあう光景を眺めながらわたしは頬づえをつく。
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