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わたしみたいに体が弱くて体力がない文化部の地味子には体育祭なんてイベント無縁だけど、今年も楽しみにしている。亮太の走る姿がかっこいいから。それを楽しみにするのは恋とは切り離して考えてもいいよね? 次の授業は美術。移動教室だからわたしは絵の具バッグを持って移動の準備をする。 「麻衣ちゃん行こう」 「うん」 美術室は亮太のクラスがある2階にある。佐藤さん達はまだ違う話題で盛り上がっているから移動しないらしい。わたしはふたりが顔を合わせるのを見たくないから足早に教室を出た。 「待って麻衣ちゃん」 「ごめん」 わたしは小春ちゃんに歩幅を合わせて階段を下りる。2階の階段の踊り場に着くと、目の前の廊下に座りこむ男子のグループが目にはいる。こういうグループ苦手なんだよね。と、わたしと小春ちゃんは顔を見合わせて苦笑いをしたあと、なるべく目線を合わせないようにうつむいて通りすぎようとした。 「あれ?麻衣」 麻衣?わたしをそんな呼び方する男子はひとりしか知らない。慌てて顔を上げると、男子のグループに亮太がいた。 「何?次、美術?」 「亮太誰だよ」 肩をゆすられながら亮太が他の男子にからかわれている。わたしと小春ちゃんはあまりの衝撃に固まる。 待って……なんで話かけるの? 佐藤さんが来たらどうするの? 「そういえば昨日の……」 「わーっ」 わたしがとっさに大声をあげると、亮太がだまる。 周りはギョッとした顔でわたしを見る。 この空気耐えられない。わたしはとっさに地べたに座りこむ亮太の腕をつかんだ。 「ちょっと来て」 亮太がゆっくり立ち上がるのを確認して腕を引っぱりながら階段を下りていく。 「なんだよ麻衣」 1階の階段横の死角でわたしは立ちどまる。 全力で走って下りたのと、緊張で心臓が早く鳴るから息が苦しい。わたしは呼吸を整えながら亮太の腕にぶら下がるように座り込んだ。 「どうした麻衣?」 「麻衣、麻衣やめて……なんで?なんで名前を呼んで話しかけるの?もうわけがわからないよ」
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