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もう好きとか嫌いとかどうでもよくなりそう。 だって亮太はやっぱりわたしが知っている亮太だって気づけただけでうれしかったから。 放課後。わたしはなんとなく家へ続く道を歩きながら空を見上げた。 ブルー、赤、黄色……わたし達の色みたい。 赤と黄色を混ぜたらオレンジになる。赤と青を混ぜたら紫になる。対照的な色味。でも夕方のオレンジの空も夕方と夜の境目に現れる紫色の空もわたしはどちらも好き。 「やっぱり赤の存在が大きいのかな……」 ふと道の先に目線を戻すと、見覚えのあるふたりが並んで歩く。 亮太と佐藤さんだ。 今日は部活がなかったみたい。 なくても一緒に帰るんだ。 暗くなっていく気持ちをぬぐって微妙に距離をとって歩く。もうすぐでふたりは亮太の家につく。 いつもより早い時間に帰れたから、ふたりは一緒に家に入っていくのかな? 亮太の家の前で立ちどまるふたり。しばらく話しこむからわたしはゆっくりと歩く。わたしが亮太の家に近づく寸前で佐藤さんが手を振って帰っていく。 わたしはあんどして息を細く吐くと、歩く足を早める。亮太はまだ佐藤さんの後ろ姿を見ているから、その横をわたしは通りすぎる。 「……麻衣」 「まだ佐藤さんが見えるんだから話しかけないで」 わたしが小声でつぶやくと、はるか先まで歩いていった佐藤さんが振り返るからわたしはドキッとしてうつむく。わたしに気づいていないのか、佐藤さんは大きく腕を振っている。 わたしの後ろで手を振り返す亮太。 それを見て満足したのか、佐藤さんが向き直ってまた歩きだした。 本当に佐藤さんは亮太が好きなんだね。 口に出しそうになる言葉を飲みこんだ。 「麻衣……あのさ」 「家……入るから」 「じゃあ由芽の部屋に行くから窓開けて待ってる」 「話すことなんて……ないよ」 わたしは慌ててドアを閉めた。 亮太がわたしに何を話すのか怖い。 わたしが聞きたくない言葉だったらどうすればいいの? 頭ではわかっているのに……まだ気持ちが追い付かないよ。
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