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雨の音ですら不快に思えないほど、この無言の空気が心地いい。それはきっとわたしの隣に亮太がいるから。 やっぱり隣は……亮太がいい。 わたしは亮太の制服のそでをつまんだ。 亮太が驚いた顔でわたしを見下ろしている。 「……つかんでもいい?」 「……もうつかんでるじゃん」 「そう……だね」 嫌ではないみたい。それがうれしくてキュッと強くそでをつかんだ。 もうすぐで学校に近づくし、まばらだけど、同じ学校の生徒も歩いているのが見える。 傘に一緒に入るのはここまでかな? わたしはなごりおしい気持ちで亮太の制服のそでから指を離した。 それに気づいても、亮太はわたしに歩幅を合わせながら歩いている。 「亮太……もうおしまいにしないと」 「もう少しいいだろ?」 「ダメだよ……バレちゃうよ」 「別にいいよ」 「……わたしは……よくないよ」 傘から抜け出すと、わたしの髪を透明の滴がぬらしていく。 「わかった……ぬれるから」 わたしに傘を返して、亮太がビニール傘を開いて走っていく。その後ろ姿にわたしはごめんねとつぶやいた。 本当はずっと一緒に歩きたかったけど、わたしと亮太が一緒に傘に入っていたことを誰かに見られたら、きっとひやかされる。そしたらわたしはクラスにいづらいと思ってしまった。 「おはよう」 「おはよう」 わたしは時間ギリギリに教室に入った。 「大丈夫だよ。きっと見間違いだよ」 「葉月は絶対さとあみが好きだから」 佐藤さんの周りがにぎやかで、わたしはキョトンとしながら見つめて席についた。 「ねぇどうしたの小春ちゃん?」 「それがね……葉月くんと知らない女子が相合い傘してたらしいよ。見た人がいるって大騒ぎしてる」 やっぱり見られていたんだ。でもわたしだって気づかれなかったみたい。こういうとき地味子でよかったと思ってしまった。 「傘持ってなくて女子が入れてくれたんじゃない」 「きっとそうだよ」 「でも亮太は自分の傘持ってたんだって」 「……傘壊れたとか?」
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