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「そうそう絶対そうだよ」
佐藤さんを周りの女子がなぐさめているのをわたしは複雑な気持ちで見つめた。
***
「えっ?相手は麻衣ちゃんなの?」
「しっ声が大きいよ」
「ごめん」
雨が降っているから、体育は体育館でバレーボールをしている。
わたしと小春ちゃんは壁にもたれかかって地べたに座りながら見学していた。
「見られたら嫌だったのに……亮太が」
口調とは反対に顔がにやける。
「ふーん。佐藤さん荒れてるよ。気を付けた方がいいよ」
さっきから強烈なサーブを打ちこむ佐藤さん。
「そうだね……気を付ける」
ダンとバレーボールが跳ね上がって、わたしの頭に当たる。
「いたっ」
「大丈夫?……えっと」
転がるボールをひろいながら佐藤さんが聞いてきた。
「だっ大丈夫です」
「そっか……ごめんね。えっと……」
「宮本です」
「そうそう宮本さん」
わたしに微笑むとコートに戻っていった。
「あれ、わざとじゃない?」
「えっ?」
「佐藤さん案外相合い傘の相手が麻衣ちゃんだって知ってたりして」
「……おどかさないでよ」
わたしは小春ちゃんの肩を両手でゆさぶる。
「ごめんて」
でも本当にバレていて……わざとだとしたら……。
そんな怖いことは考えないようにしょう。
わたしはひざに顔を伏せて、足をバタバタさせた。
お昼休み。わたしと小春ちゃんは美術部の用事で美術室に向かった。本当なら今日は亮太の教室に近づきたくない。絶対また廊下で地べたに座りこんで固まっていると思うから。
「こんな日にどうして……」
わたしはため息をもらした。
「麻衣ちゃん、心の声がもれてるよ」
小春ちゃんが苦笑いする。もうすぐで2階の階段の踊り場につくけど、もう声も聞こえるし、亮太の姿も見える。やっぱりいた。
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