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わたしはしゅんとしながら亮太の制服のそでをつかむ指を離した。するとその指を亮太がギュッて握ってくれた。わたしは驚いて亮太を見上げた。
「麻衣は怖がりだから」
「うん」
わたしもギュッて亮太の指を握り返した。
亮太の手いつの間に大きくなったのかな?
わたしの手を包みこんじゃうくらい安心する手だったなんて知らなかった。
「亮太。ありがとう」
「何がだよ」
「何かな」
「変なやつだな」
わたしはクスッと笑った。
亮太の不器用なやさしさを感じたらやっぱりわたしは亮太が好きだって思ってしまった。
亮太の家に近づくと、暗がりに人影がいる。
それが誰なのか気づいてわたしは慌てて亮太の指から離れようとした。なのに亮太はわたしの指を離してはくれない。
「亮太……佐藤さんが」
わたしは慌てているのに、亮太は真っ直ぐ前だけを見て歩いている。
「あっ亮太」
亮太に気づいて佐藤さんが手を振る。
「亮太……離して」
どんどんと近づく距離にわたしは目をつぶった。すると亮太が繋がれた手を後ろに回して隠すように佐藤さんに近づいた。
「あれ宮本さんも一緒?」
「うん。カバンわたし忘れちゃって葉月くんが届けてくれて」
なんだか苦しいいいわけに聞こえるけど本当のことだし。わたしは説明しながらも後ろに隠された指から離れようとするのに、逃げてもまた亮太はわたしの指をたぐりよせて離さない。
「……そっか。今日も寄っていっていい?」
わたしは亮太を見上げたけど、相変わらず感情の読めない顔をしている。
「帰ってくれる」
「……わかった。じゃあ明日ね」
そういうと、佐藤さんが走って帰っていった。
「なんであんな言い方したの?冷たいよ亮太」
わたしは亮太の指を振りほどいた。
「おまえは俺にどうしろっていうんだよ。やさしくすればよかったのかよ」
「もっと言い方があるって思っただけ。亮太……わたしはずるいから亮太がわたしにだけやさしくしてくれたらいいなって思っちゃうの。でもだからって誰かを傷つけるのはいやだよ」
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