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わたしはうつむいて、亮太の制服のすそをギュッとつまんだ。
「悪かったよ。そんな顔するな。俺も麻衣だけにやさしくしたいのに……ごめんな」
わたしは首を横に振った。
亮太と一緒にいたい。
でも亮太は練習で疲れているだろうし、明日も早いだろうからわがままいえない。
でも今日はまだ離れたくない。
「じゃあね。明日も練習頑張ってね」
わたしは亮太の制服のすそをつまんでいた手を離して、手を振った。
「麻衣……まだ話さないか」
「亮太」
気持ちがシンクロした。
「疲れてない?ご飯は?お腹すいているでしょ?」
「確かに腹は減ったな。じゃあ1時間後に俺の部屋こいよ」
「わかった。じゃあ後で」
わたしは急いで家に帰ると、ご飯も食べてお風呂にも入った。髪だってちゃんと乾かして、後は寝るだけにして亮太の元へ行った。
***
「あれ麻衣ちゃんなんてめずらしいね」
玄関のドアを開けながら由芽ちゃんが目を丸くしていた。
「亮太のところに来たの」
「やっぱりお兄ちゃんは麻衣ちゃんか」
「ちっ違うよ」
わたしは慌てて否定しながらも顔がにやけるのをがまんした。
「それならうれしいけど、佐藤さんは強敵だからね」
「麻衣ちゃんと亜美ちゃん正反対だしね」
わたしは小学生の由芽ちゃんが意外に人を見ているし、わたしと佐藤さんが分析されていることに驚きながらも、苦笑いした。
「お兄ちゃんなら部屋にいるよ」
「ありがとう。おばさんこんばんは。おじゃまします」
「ごゆっくり」
リビングの方からおばさんの返事が返ってきて、それを聞きながら階段を上った。
「亮太。来たよ」
亮太の部屋のドアをノックすると、亮太がドアを開けた。
「おっお待たせ」
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