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「ああっ」と素っ気ない返事をして、亮太がベッドに腰を下ろすと、肩にかけたタオルでゴシゴシと頭を拭いている。
「来るの早かったかな」
「そうかな?今お風呂からあがったの?」
わたしはベッドを背にして床に座った。
「由芽が風呂長かったから」
「そっか」
亮太はまた面倒くさいのか髪の毛に滴がまだ残っているのにそのままにして乾かそうとしないからわたしはあきれた。
「亮太、わたしの隣に来て」
亮太の腕をつかんでベッドから下ろすと、わたしの横に亮太を座らせた。
「亮太はわざとかな」
そういってわたしは亮太の肩にかかるタオルをとって、亮太の頭をゴシゴシと拭いた。
「わたしに拭いてほしかったの?わざとなのかな」
「んなわけないだろ。めんどいんだよ」
「そうだね」
「信じてないだろ」
そういうと、わたしのほうに亮太が振り返る。
「目にはいったら危ないからちゃんと前向いて」
「わかったよ」
亮太がやけに素直にわたしのいうことを聞くからわたしはクスッと笑った。本当は後ろから亮太をギュッとしたくなったけど、わたしは「おしまい」と亮太の頭にタオルをかけて、肩をポンとしてがまんした。
亮太はわたしに背を向けたままだし、わたしも亮太の横に膝を抱えて座っているだけ。だけど温かい気持ちになるのは、やっぱり隣に亮太がいるからだと思う。
「亮太、学年対抗リレーは1位取れそう?」
「当たり前だろ。俺が最後に走るんだから」
「そうだよね。いつでも亮太は一番だもんね。そうだ。見たいな、アルバム」
わたしは立ち上がると、亮太の本棚からアルバムを取り出した。
「やめろって」
亮太が慌ててわたしからアルバムを取り上げようとするから、わたしは腕を上げて亮太をよけた。
「久しぶりに見たい」
「恥ずかしいだろ」
「今さらだよ。小さい頃よく一緒に見たでしょ?一緒に見ようよ」
亮太はため息をつくとかんねんしたのか勝手に見ろよというからわたしはアルバムを開いた。
「この時のリレーも一番だったよね」
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