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「亮太……体育祭、亮太は一番取るよね?」
「……当たり前だろ。だからちゃんとゴールしたとこ……見ろよ」
「わかっているよ。ちゃんと見るから。無理はしないでよ。調子悪そうだったから」
「……誰のせいだと思ってんだよ」
「えっ?」
亮太は小さな声で呟くようにいったけど、亮太の背中に耳をくっつけていたわたしははっきり聞こえてしまった。
「なんでもねーよ。てか俺だけ見てろよ」
「うん。亮太だけ見てるよ」
ずっと前から……ずっと前から亮太しか見てないんだから今さらいわなくてもわたしはずっと亮太だけを見てるよ。
「体育祭楽しみだな」
「重いからいい加減離れろよ」
「いやだよ。亮太の背中落ち着くんだもん。眠くなりそう」
わたしは目をつぶって、亮太に体重を預けた。
「はっ?」
亮太がわたしから離れてベッドに腰を下ろすから、わたしはよろけて倒れそうになる。
「家帰って寝ろよ。そのまま寝られたら朝まで座ってないといけないだろ」
「わかってるよ。帰ります」
わたしはアルバムを本棚に戻すと、亮太を見てクスッと笑った。
「なんだよ」
「なんでもない。おやすみ」
わたしは亮太の部屋を出ると、ドアにもたれかかって、にやつきそうな顔をおさえた。
「おばさん、おじゃましました」
亮太、顔真っ赤だった。ちょっとからかいすぎたかな?いつもいじわるされているからお返しなんだから。
***
朝、亮太が佐藤さんと一緒に登校することも、一緒に朝練していても、佐藤さんが亮太の話をしていてもわたしは気にならなくなった。
相変わらず小春ちゃんとは微妙に気まずいけど、時間がたてば元通りになるって思っているから、よけいなことを考えないようにした。
体育は苦手だけどなるべく足を引っ張らないように体育祭の練習も頑張った。
わたしが出場するのは徒競走とムカデ競争、女子全員で踊るソーラン節。ソーラン節のはっぴは代々受け継がれているはっぴで、わたしは青を選んだ。
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