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佐藤さんは黄色、わたしがイメージしていた色を選んだことに驚いた。
「何回もくっしんするから膝痛いよね」
「動きもつらいよね」
小春ちゃんらしいピンクのはっぴをヒラヒラとさせながら小春ちゃんが額の汗を拭った。
「覚えた人は引き続き練習して。自信のない人はわたしのところに集まって」
佐藤さんが体育館のすみに走って手招きするから、わたしと小春ちゃんは迷わず佐藤さんのところへ行った。
「じゃあ曲なしで動きの確認しょう」
佐藤さんの手拍子に合わせてわたしと小春ちゃんは踊り出すけど、いつも同じ場所でつまずく。
「苦手な動きはわかったから、繰り返し練習しよう」
なんでも器用にこなせて、何事にも一生懸命で、本当に佐藤さんはかっこいいな。それに比べてわたしはとろいし、いやなことから逃げてばかりだけど、今回は絶対に逃げたくない。
「曲に合わせたら混乱するかもだけど、よくなっているから自信持って」
「あっありがとう、佐藤さん」
「宮本さんて何にでも一生懸命だから蒼井先輩が好きになっちゃう気持ちわかるよ」
わたしの横にいる小春ちゃんがうつむいている。
小春ちゃんは不安で仕方がないんだよね。
わたしも小春ちゃんの気持ちがわかる。
わたしだって亮太と佐藤さんのことばかり気にしていた。でもそれはたった一言で気持ちが楽になることもわたしは知っている。
「噂はうそなの……わたしと蒼井先輩は付き合っていないの」
「えっそうなの?お似合いだと思ったよ」
「そうかな?わたしには蒼井先輩はもったいないよ。それに……」
わたしはドキドキとする気持ちを落ち着かせるように空気を吸い込んだ。
「わたしは好きな人がいるから。小さい頃からずっと好きな人がいるから」
「そっそうなんだ」
「うん」
佐藤さんにいえた。亮太とはいえなかったけど、わたしの気持ちがいえたのは大きな一歩な気がした。
「じゃじゃあ合流して動きの確認しょう」
佐藤さんが自分の場所に戻って行くのをわたしは見つめた。
「やっぱり麻衣ちゃんはすごいね」
「すごくないよ。緊張した」
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