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わたしと小春ちゃんは顔を見合わせた。
「何か焦ってるらしいけどふたりに何があったんだろうね?」
「やっぱりさとあみの葉月への愛がとまらなくなったからじゃない?さとあみ葉月のこと好きすぎてじゃっかんひくよね」
「何かわかる」
もしも佐藤さんに告白されたとしても、付き合ってほしくない。亮太の隣はわたしがいい。わたしの隣には亮太がいいから。
わたしは沈んだ気持ちで校庭に移動した。
「麻衣ちゃん大丈夫?」
「小春ちゃん……気にしていられないよね。ちゃんと体育祭に集中しないとね」
わたしは無理やり笑顔を作ると、集中と思いながら気持ちを引き締めた。
「午前中は徒競走とムカデ競争だね」
開会式も、準備体操も終えて、競技が始まった。
「最初は3年生の徒競走だね」
「応援しないとね小春ちゃん」
「えっ?うん……」
小春ちゃんの目は入場からずっと蒼井先輩をとらえている。黄色いはちまきをした蒼井先輩はやっぱり緑がよく似合うと思った。
『今日だけは応援して』という蒼井先輩の声が響く。蒼井先輩の順番になってコースに立つと、『蒼井先輩』とか『颯人』という女子の声がたくさんあがる。
その声援を聞いて小春ちゃんがうつむく。
「小春ちゃんもちゃんと応援しょう」
「麻衣ちゃん……恥ずかしくて無理」
小春ちゃんの気持ちが痛いほどわかる。わたしも小学生の時に、亮太に幼なじみなのをいうなといわれていたから、周りは亮太を応援しているのに、わたしは心の中でしか応援することができなかった。
祈るような気持ちで両手を握りしめて、ただがんばれって声にならない声援をたくさん亮太になげかけていた。だから小春ちゃんが声を出して応援できない気持ちも、恥ずかしい気持ちも理解できる。
鳴り響くピストルの音。
相変わらずきれいなフォームで蒼井先輩が走り出した。わき上がる蒼井先輩への声援。
「蒼井……先輩」
声援にかき消されるような小さな声で小春ちゃんがつぶやく。
「小春ちゃん」
わたしは小春ちゃんの腕をつかむと、立ち上がる。つられて小春ちゃんも立ち上がった。
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