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わたしのはちまきは?
わたしが混乱していると、後ろから肩を叩かれた。
「蒼井先輩」
振り返ると、蒼井先輩が立っていて、わたしに自分がしていたはちまきを差し出していた。
「なんで蒼井先輩がいるんですか?」
「この場所、3年4組の席だよ」
蒼井先輩が指差す方を見ると、黄色のはちまきをつけた先輩達が座っている場所だった。
「彼も大胆だね。俺に見せつけるつもりだったのかな?でもこれは想定外でしょ」
そういうと、わたしの頭に蒼井先輩のはちまきを結んでくれた。
「あの……」
「ちゃんと返してもらうから大丈夫だよ。がんばって」
「ありがとうございます」
わたしは蒼井先輩にペコッと頭を下げて、走って入場口まで行った。
先に女子が走って男子は後。
わたしはいちばんに走るから一番前で入場するから緊張する。でも徒競走はいつも一番最後にゴールするから、気楽に走ろうと思った。
それにわたしのはちまきは一番でゴールした蒼井先輩のはちまき。なんだかいつもより速く走れそうな気になっちゃうなんて思ってる。
コースに立って亮太を見ると、亮太はジェスチャーではちまきを取れといっているみたいだった。やっぱりこのはちまきは蒼井先輩のはちまきだって知っているんだ。わたしはむっとしてわざと顔をそらすと、クスッと笑った。
ピストルの音。わたしは集中して走る。
結果は最後じゃなかった。後ろから2位。それでもこんなの初めてでうれしくて笑みがこぼれた。3の旗の後ろについて亮太の方を見ると、お腹を抱えて笑っているからわたしはむっとした。
女子の最後に佐藤さんがいた。苦しそうに走り抜けて2位だった。陸上部でもない女子に負けたからか顔からは悔しさがにじみ出ていた。
亮太も心配そうに佐藤さんを見ていた。
次は男子の順番。
亮太は最後に走るらしい。
わたしの座る目の前に次々とゴールしてくる男子を見つめて徐々に緊張が増していく。
「2年生最後の徒競走です」
そうアナウンスされて亮太がコースに立つ。「亮太」と一際大きな声で佐藤さんが声援を送る。わたしは言葉を発することが出来なくて、祈るような気持ちで見守る。
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