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わたしは背筋がゾクッとした。まさか見られているとは思わなかった。 「わたしの位置からも見えたけど会話は聞こえなかった。でもあれはどう見てもごまかしがきかないよ。どうするの?」 少し興奮ぎみに小春ちゃんが早口でしゅべるけど、わたしの耳にはまったく入ってこない。 「おかしいとだけいってたけど佐藤さんのグループは何か事情があったんじゃないかってフォローしてたよ。でもこのあとムカデ競争があるよ。どうするの?」 「大丈夫。たぶん」 わたしと亮太をあやしんでいるなら、やっぱり今日佐藤さんは告白するかもしれない。 自分で大丈夫って言い聞かせたいだけで、自信はないから不安になる。 「麻衣ちゃん、ムカデ競争の入場に行かないと」 「そうだね」 わたしは不安な気持ちのまま、ムカデ競争の列に向かった。すでに佐藤さんとそのグループが並んでいた。わたしの位置は先頭の佐藤さんの後ろ。わたしは佐藤さんの後ろに並んだ。 「宮本さんさっきなんだけど……亮太と何話していたの?」 「あれは……」 「大丈夫。ごめん。集中だよね。がんばろう」 「うん……」 佐藤さんと微妙な空気のまま入場して、縄に付いたひもを足に結んだ。 「がんばろう」 そういって佐藤さんが振り返る。 「一番目指そう」 そう後ろから聞こえてきた。わたしは緊張で顔を強張らせながら佐藤さんの肩をつかんだ。 「亮太」 佐藤さんが一番端の列の後ろに並ぶ亮太に手を振る。わたしは見ないように視線をそらした。すると耳をつくピストルの音。わたしは慌てて佐藤さんの足に集中した。 「イチニ、イチニ……」と佐藤さんが掛け声と共に足を上げて走るけど、ポールを回るときにわたしの足がもつれて倒れた。佐藤さんが後ろを心配して振り返るけど、わたしから後ろ2人がわたしの上に倒れてくる。わたしは押し潰されながら足に鈍い痛みを感じた。 後ろの2人が立ち上がるからわたしも立ち上がりたいのに胸を打ち付けて呼吸が苦しいし、足も痛くてわたしは地面に手をついてうなだれた。 「大丈夫?宮本さん」 「苦しい……」
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