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佐藤さんの呼びかけにやっとの思いで返していると、誰かがわたしの元に飛んできて、足に結びつけたひもをほどいてくれている。
「大丈夫?宮本さん」
顔を上げると、そこには蒼井先輩がいた。
「蒼井……先輩」
わたしは蒼井先輩に倒れこむように蒼井先輩の肩に頭を預けると、わたしを抱えようとした蒼井先輩の腕を誰かが払った。
「大丈夫か?麻衣」
その声はわたしが一番落ち着く大好きな声。
「亮……太」
「麻衣は俺が連れていくから麻衣にさわるな」
そういうと、わたしの腕を取って、亮太がわたしに背中を向けてわたしを持ち上げた。
「亮太……恥ずかしいよ」
「いいからおまえは担がれておけ」
そういってわたしをおんぶしながら亮太が歩きだした。
亮太の背中は落ち着くし、温かい。わたしは徐々に深く呼吸をし始めた。
「大丈夫か」
「うん。重くない?」
「重い」
「しっ失礼だよ」
わたしは亮太の肩をポンポンと叩いた。
「動くな。倒れる」
「ごめんなさい」
わたしは亮太の背中に顔をうずめた。
「亮太はいつでもわたしを助けてくれるね」
「そういえばあったな。こんなこと」
「公園で遊んでいたらわたしがブランコから落ちて大泣きしたら、亮太がこうしてわたしの家までおぶってくれたよね」
あの時はわたしより小さくて頼りない亮太が今は頼もしく見えた。わたしなんかより大きくなって、力だって強い。今はこの背中がわたしを安心させてくれる。
「亮太……」
わたしは腕を亮太の首に絡めてギュッとした。
「ちゃんとつかまっていろよ」
「うん」
保健室に着くと、亮太がわたしをベッドに下ろす。
「ありがとう、亮太」
「大丈夫か?」
「足は意外と大丈夫かな?でもまだ苦しい」
わたしは胸をギュッとした。胸が痛いのは倒れた時に打ったのもあるけど、違う理由もある気がしてわたしはうつむいた。
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