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わたしはクスッと笑った。
保健室のスピーカーからはお昼休憩をつげるアナウンスが流れた。
「教室戻れるか?」
「歩けないからおんぶして」
「重いからいやだね」
そういってふたつに結んだわたしの片方の髪を、亮太がひっぱる。
「それはいやだよ」
クッと笑うと、亮太が戻るぞっていうからベッドから出たけど、やっぱりまだ足が痛い。でも心配をかけたくないから亮太の後をついて歩いた。
「大丈夫か?」
「う……ん」
「麻衣は本当に嘘がヘタだな。ほら」
亮太がわたしの手を取ると、キュッと握るからわたしは顔を赤らめながら階段を上った。
「わたしの教室もうすぐだから大丈夫」
「教室まで連れていくよ」
「でも……」
わたしは2階の踊り場で立ちどまって亮太の指から離れた。
「全校生徒の前でおぶられたんだぞ。今さらだろ」
「いわないで、思い出しただけで恥ずかしい」
今思い返すと、本当に恥ずかしい。わたしは両頬をおさえた。
「だから最後まで頼れよ」
「うん」
わたしは亮太の腕をつかんだ。
「こっちがいい」
「わかった」
亮太にもたれかかって階段を歩いた。
「午後はちゃんと座って見てるんだぞ」
「ちゃんと見てるよ。学年対抗リレー、チームは違うけど亮太だけ見てる。応援しているから」
「絶対に一番になるから」
「うん」
わたしは亮太の肩に頭をコツンとした。
3階の踊り場でわたしは亮太の腕を離した。
「ありがとう。がんばってね」
「後でな」
わたしは亮太が階段を下りていくのを眺めながら手を振った。
教室に入りづらいけど、わたしはひとつ深呼吸をして後ろのドアを開けた。
ざわめきが一瞬でシーンとなる。
予想はしていたけど雰囲気が怖い。
わたしは痛めた方の足をかばいながら自分の席まで歩いた。
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