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「どうして亮太がいるの?」 屋上の踊り場に座って亮太がお弁当を食べていた。 「麻衣こそ……同じ理由か」 そう言い捨てると、亮太が水筒の飲み物をぐいっと飲んでため息をついた。 「早く座れよ」 「うん」 わたしは亮太の隣に座ってお弁当を広げた。 「麻衣も気まずかったのか?」 「空気がね……亮太は?」 「からかわれてうっとうしいから」 「そっか」 わたしはお弁当箱のふたを開けてため息をついた。 「麻衣の弁当今でもいなり寿司が入っているんだな」 わたしのお弁当箱をのぞきこんで亮太がいった。 「そうだよ。今でもいなり寿司、甘々な卵焼きは必ず入っているよ。卵焼き食べる?」 亮太はわたしのお母さんが作った砂糖たっぷりな卵焼きが好きで、おやつに卵焼きばかりねだっていたことを思い出してクスッと笑った。 「また思い出し笑いかよ」 そういうと、亮太が卵焼きを2つ一緒につまんで自分の口に運ぶ。 「あっ卵焼き」 「うまっ」 幼い頃の亮太の笑顔が重なって見えてわたしはぷっと笑った。 「変わらないっていいね亮太」 「そうだな。おまえといるとからかわれたのがばかばかしく思えてきた。教室戻る」 「どういう意味?」 「そういう意味だよ」 わたしの頭をくしゃくしゃとして亮太が階段を下りていった。 「そうだよね。気にしない、だよね」 わたしは髪の毛を結び直すと、教室に戻った。 「佐藤さん」 わたしが佐藤さんに話しかけると、周りの空気が一変した。 「ムカデ競争で迷惑かけてごめんなさい。その分ソーラン節はちゃんと踊るから。佐藤さんに教えてもらったからがんばるから」 わたしの言葉にキョトンとしたあと、佐藤さんがフッと笑う。 「足痛いなら無理じゃない?くっしんのときつらいかもよ」 「大丈夫。まだちょっと痛いけど最後までがんばる」 「……無理しないでね」
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