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「お守りだよ」 「ありがとうな」 わたしの頭をポンとして亮太が入場口へ走って行った。わたしは亮太がポンとした場所に両手を当ててはにかむと、自分の席に戻った。 「何か麻衣ちゃんと葉月くん見てると恥ずかしくなるよ」 小春ちゃんが両頬に自分の手を当てて首をブンブンと振っている。 「でもうらやましいな。誰も入り込めないふたりの世界って感じでいいなって思っちゃった」 「小春ちゃん……やっぱり大胆過ぎたかな……今さら恥ずかしくなってきた」 小春ちゃんが慌てるわたしを見てクスッと笑う。 「最後のプログラムは学年対抗リレーです。赤、白、青、黄色組の各学年の代表選手が全速力で走り抜けます。みなさん応援よろしくお願いします」 そうアナウンスされると、選手が入場してきて、すでに異様な盛り上がりを見せている。最初は1年生が走る。今の得点ボードを見ると、青組が圧勝していて、他のチームはきんさで順位を競っていた。 学年対抗リレーは得点が高い分、じゅうぶん逆転を狙える。 1年生が走り終えて、2年の順番になる。まずは女子が先。わたし達は力の限り応援した。アンカーの佐藤さんのがんばりもむなしく、黄色組は3位に終わった。 「いよいよだね」 「そうだね」 男子の出番になる。本当なら黄色組を応援しないといけないのに、わたしは赤組を応援する。 亮太のチームは2位を走っている。きっとアンカーの亮太にまわれば、逆転して1位でゴール出来るはず。最後の走者、亮太にバトンが渡ると思った瞬間、亮太の指にバトンがはじかれて赤のバトンが宙を舞う。 亮太が手を後ろにしたまま固まる。走者がバトンをひろいあげて亮太に完全に渡すころには順位は3番目になっていた。わたしは両手を握りしめて見守る。 まずはひとりを抜いて2位になった。でももうすぐでゴール直前なのにきんさでせめぎあっている。後は直線。亮太がどんどんとスピードを増していく。あと少しでゴール、あと少しで亮太が1位。 「亮太」 わたしは大声で叫んだ。 きんさで亮太がゴールテープを切った。 「葉月くんすごいよ」
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