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小春ちゃんは興奮ぎみにわたしに話しているけど、わたしには歓声だって届かない。亮太がわたしのはちまきを巻いた腕を高くあげた。そこにチームメイトがかけよってハイタッチをして喜び合っている。 いつだって一番の亮太。そんな亮太をわたしはずっと一番に思っているんだから。そう思いながら涙を拭った。 次に走る3年生がコースに入る。亮太は列の一番後ろで待機する蒼井先輩に近づくと、何かを話している。蒼井先輩が後ろを振り返ると、ふたりがわたしに視線を送っている気がしてドキッとした。 ピストルの音が響き渡ると、亮太がチームメイトの元へ戻った。一体ふたりは何を話していたんだろう? 「小春ちゃん、次は蒼井先輩が走るから応援しょう」 「うん」 アンカーの蒼井先輩は4番目にバトンを受け取ると、次々に抜いていき、2番目になった。蒼井先輩を応援する歓声は一際大きい。 「蒼井先輩」 両手を握りしめて小春ちゃんが呟くように蒼井先輩に声援を送る。少しのところで蒼井先輩は抜かせず、蒼井先輩達は2位だった。 「終わっちゃったね」 「そうだね」 歓声がいつまでも鳴り響く。 選手が退場してくると、珍しい組み合わせが歩いてくる。 「あんた結構速いじゃん。今度勝負しろよ」 「なんの勝負?宮本さんのこと?勝つ自信あるんだ」 「ちげーよ。走りで勝負に決まってんだろ」 「俺は美術部だよ。陸上部の君が負けたら笑えないね」 「強気な発言は勝ってからいえよ。麻衣は俺を応援するから残念だな」 「俺に見せつけようとしたくせに逆に焼きもちをやいちゃう君には負けないと思うよ」 「何の話だよ」 わたしは聞こえてくる会話にあぜんとした。 「かんぺきな先輩に戦いを挑む生意気な後輩みたいだね」 小春ちゃんのツッコミにわたしは苦笑いした。 「亮太がただ単に子供に見える、もしくは普通に仲いい先輩後輩に見えるから不思議」 「本当だね」 わたしと小春ちゃんは顔を見合わせて笑った。
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