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「麻衣にはちまき返さないと。ということで、さようなら先輩」 わたしはぷっと笑った。 「麻衣」 「蒼井先輩にあの口の聞き方はダメだよ。わかった亮太」 「お母さんだな麻衣は……はちまきありがとうな」 亮太がそっぽを向いてわたしにはちまきを差し出すからつかむと、亮太がはちまきを引っぱってわたしを引き寄せる。 顔が近い。わたしの目の前にある亮太の顔から目線をそらしてうつむいた。 「ドキドキさせないでよ」 「お返し」 そういって亮太がにかっと笑って走って行った。 わたしははちまきをつかんだまま亮太の後ろ姿を見つめた。 亮太は相変わらずわたしにいじわるだけど約束を守ってくれたから今日は許してあげる。 結局体育祭は青組がそのまま逃げ切った形にはなったけど、わたしは学年対抗リレーの亮太の最後の走りがわたしの中では一番だと思った。 いすを運びながらクラスごとに教室に戻る。 「麻衣ちゃん足大丈夫?いす持ってもらったほうがいいよ」 「大丈夫だよ。痛みも引いたし」 いすを抱えて校舎にはいると、玄関に亮太が立っていた。 「貸せよいす」 「亮太のいすは?」 「とっくに置いてきた。だからいす」 そういってわたしの手からいすを取ると、左手で抱えて右手をわたしに差し出した。 「つかまってろよ」 「だっ大丈夫。恥ずかしいよ」 わたしは横にいる小春ちゃんをチラッと見る。 「はっ葉月くんに頼ったほうがいいよ」 「だってよ。ほら」 わたしは亮太の右腕にしがみついた。 「ありがとう。亮太」 「今日……一緒に帰ろう」 「でも」 佐藤さんと帰らないのといいかけてだまった。 亮太が帰りたい相手はわたしなんだから自信持たないとダメだよね。 「俺は約束を守ったんだからおまえも守れよ」 「うん」 「体育祭実行委員の仕事終わるまで待ってろよ」 「わかった。じゃあ教室で待ってるから迎えにきて」
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