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今日の空の色はグレー。透明の滴をわたしのピンクの傘が受け止める。 「いってきます」 亮太も家から出てきて、ビニール傘を面倒くさそうに開く。わたしは声をかけるべきか悩んでいたら、亮太がわたしに気づく。 「おっ……おはよう」 「おはよう。行かないの?」 「行くよ」 わたしは亮太の後ろをついていく形で歩きだした。 「練習休みなの?」 「はっ?なに?」 亮太が立ち止まって振り返る。 「なんでもない……ごめん」 バチバチと傘に規則的な音をたてて、空から降る透明の滴に会話をじゃまされて聞こえないみたいだった。 わたしがうつむいていると、亮太が自分のビニール傘を閉じてわたしの傘に入ってくる。 「なんで?」 「聞こえないから隣にいた方が会話できるし」 「いやだよ……見られたらどうするの?」 わたしが傘から追い出そうとして、亮太の肩を強く押しても亮太の体は動かない。 「学校近くになったら離れるからいいだろ」 「……ダメ……だって……」 この道は佐藤さんが通るでしょ? 口に出せずにうつむいていると、わたしの手から傘を取って、亮太が傘を持った。 「亮太……」 「麻衣はちっこいから歩きづらいし、あともっとこっち寄って、ぬれるから」 傘を持ちかえてわたし側の腕を伸ばすと、肩をつかまれて亮太のそばに引き寄せられた。 「亮太……近いよ」 「肩がぬれるよりいいだろ。早く行かないと遅刻する」 「……うん」 わたしの肩が亮太の腕から解放される。わたしのピンクの傘の中でふたりで歩いた。 わたしの肩に触れる亮太の腕に、わたしは自分の指を絡めたいと思ってしまった。 早く鳴る心臓の音が、わたしの体中に響き渡る。亮太に聞こえていないか不安になっちゃう。 でも聞かれてもいいかな?それほど今わたしは亮太にドキドキしている。 真っ直ぐと前を見る亮太の横顔をチラッと見上げる。亮太のまつ毛長い。まばたきするたびに上下にゆれる。話せないからと傘に入ってきたくせに亮太はずっと無言で歩いている。
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