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「…へぇ。」
お屋敷の…都会の暮らしと言うのは随分便利になってるらしい。
「それでその“扇風機”と言うのはどう言う仕組みなんだ?」
「羽が付いてるんです…重しを置くとそれがタイヤみたいに回って…って伝わりますか?」
「…分からなくは無いかな。きっとその羽と言うのは花弁のような形状をしてるんだろう。」
「オウコ殿は王国に住んでらっしゃったのですか?まるで見て来たみたい…。」
「ん…まぁ住んでいたことはあるが若い頃、1年無いぐらいの間さ。…生憎貧乏で、今と変わらず焚き火での生活だったけどね。
金を貯めてやっと買えたのはあの機車ぐらいだね。」
…ぁあ、思い出すのも嫌になるくらい何も覚えていない。
「…ところで扇風機とやらは回るんだろう?例えば猫とかにはどうなんだ?」
「ぁあ…それは危ないと思います。尻尾を巻き込まれないようにと注意されましたし…。」
「ふむ…。」
──因みに今は、“生活に必要なものは他に無いか”と言う本題から逸れて、都会での暮らしと田舎の暮らしを比べ合っているところだ。
「…そう言えばここには火管や火球は無いのですね?」
──ガスを耐火性のパイプに通して料理用や明かり用の炎を出すものだ。火球はランタンのような作りになっている。
「はは♪都会ならあるかもだが、こんな田舎にそんなものを使ってるご家庭は無いと思うがね。」
──都会は夜でも明るいんだ。あれは今でも覚えているなぁ…♪
「…いや、耐熱素材さえあれば作れんことは無いか?しかし、耐火素材の成形なんてワタシに出来るかどうか…。」
「……」
「…ぁあ済まない。
…しかし都会は贅沢だな。火管や火球なんてものがあるのに、夏を暑がるのかい?」
「ぁ…そう言えばここの炎はとても温かいです!」
「…ふ♪あと半年もここにいればそんなことは言えなくなると思うがね。」
「半年……」
…おっと、こう言う話をするのは迷惑だろうか?
「半年もここにいて良いのですか…!?」
「え?それは勿論。」
「…そ、その…嬉しい、です…。」
「…そう。
ところで、今後の予定とかは無いのかい?
これから必要になるものがあるなら買い物の予定を決められるし、何なら僕が作るのも良いかも知れない。」
「…ぁ。」
「え?…まさか何も考えてなかったの?」
「…はい……。」
「…全く?」
「はい……。」
「かぁ~…。」
考えられない。
「…それはもうここで暮らすか、屋敷に帰るかしか選択肢が無いんじゃないか…?
少なくとも野宿だけはお勧めしないね。」
「…のじゅく…?」
…またこれか…。はぁ〜。
──それはまぁ、“メイド”と“野宿”は無縁なものだろうけどね…と心の中で苦笑しつつ、言葉の意味を教えてやることにする。
…えぇと、何の話をしてたんだったか…?
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