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「よっし…♪」
──布で前髪を覆い、気合いを入れて調理場に立つセンカ。尻尾も振っちゃって、楽しそうだね…♪
「ニャァ~?」
「フフ♪今日はセンカのお手並み拝見だ☆」
イチカと今に寝そべり、センカの作る昼食を待つ。…成程、ただ食べ物を待つと言うのはこんなにもお腹が空くものなのか♪
「…ふん、ふーん…♪」
…何だか凝ったものを作っているようだ。餅…じゃないね。小麦粉だっけか。僕はあまり使わないや。
「良しっと…♪」
小麦粉餅を持って歩くセンカを見てイチカが起き上がる。
「ニャァッ♪」
「あ、駄目ですよイチカさん!これは今日のお夜食で…!」
「…あ、そうなんだ。じゃあ食料庫で良いかな?」
「すみません、昼食はこれから!」
「ニャァ~ッ。」
「座布団でも捏ねてなさい。」
「フ?…。(こねこね、がじがじ。)」
「フ…♪」
夜が待ち遠しいね。
さて…イチカ用にご飯を作ってやるとしようか。何時もの挽き肉だが。
「ふっ…はい!」
「…ぉお。」
黄色い円盤が宙を舞い…反転して鍋へと戻る。焦げては無さそうだ。
「フンフン…」
「邪魔しちゃダメだぞー?」
ひくひくと動くイチカの鼻を指で押す。
「ニャアッ。(ばしばし)」
「ははっ♪」
「出来ましたっ!パンケーキです!☆」
「ほぉ〜…。」
何だか可愛らしい。キャラメルとシロップが掛けられてとっても甘そうだが…シロップに溶けたキャラメルが何とも言えない美しさで食欲をそそる…。
「フゥ…フッ…♪」
「…。」
無言で食べ掛けの挽き肉をイチカの前に差し出す。
「シャァアー!?」
「オウコ殿…?」
「駄目なものは駄目だ。
…センカ。言い忘れていたが、猫は本来肉食の動物だ。野菜も穀物も育てない。猫は狩りで獲物を仕留める動物だからね。」
「…?」
「シャァア…。」
「…つまり、僕達とは体の構造が違うんだよ。胃や腸の構造が、と言うべきかな。
人間だって食べ物に依っては消化しにくかったりするだろう。」
「ぁ…。」
「小麦粉は穀物だし、砂糖もあまり猫に良いとは言えない。キャラメルは…この際仕方無いから一つだけあげてしまおう。
ほらっ。」
「ニャッ。ン、ンゥ…?ハッ…カッ…!
…ウーー…。」
如何にも食べにくそうに咀嚼した後、何か言いたそうな顔でこっちを睨む。
いや、寄越せと言ったのはそっちだろうに…。
「…まぁ、こんなに近くで暮らしてても越えられない壁もある、と言うことだ。」
「ンゥ…。(もぐもぐ)」
大人しく肉を食べ始めた。何だか食べ方がぎこちない。後で歯磨きをしてやった方が良いかも知れない。
「…ぁの…。」
「…おっと、パンケーキが冷めてしまう♪」
「ぁ…いただきます…。
…。」
「どうしたの?美味しくない?♪」
「い、いえっ…。」
「…誰にだって出来ないことはあるものさ。年齢で言えばイチカの方が僕よりずっと歳上に当たるが…未だに駆けっこではこいつに勝てないしね♪」
「…。」
「…今のは“肉ばかり食べるだけのことはある”とか、猫も理由があってそうしているって意味だったのだけどね。」
「理由がある……そう、ですね…。分かります…。」
「猫が1番好きな食べ物はネズミだ、とも言われている。」
「ぅ…。」
「…いや、食事時にする話じゃなかったな…。」
「私も好きです…ネズミ…。」
「え。」
…イチカなら兎も角、おっとりしたセンカがネズミを食べるのは全く想像が出来ない。
「…まぁ、ペットや獣人用のレストランもあるからね。」
…ペット用のそれはレストランと言うより、狩り場兼遊び場だとは思うが。
「レストラン…?」
「…ぁあ、悪い。ついべらべらと喋ってしまうな…。」
…しかも、内容に願望が混じっているように思う。
「温め直しましょうか?」
「いや。このままで良いよ。」
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