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「…なぁ、センカ。何処かに行かないか?」
「はい?…買い物でしょうか?何なりとっ。」
「いや…そうじゃ無い。
んん〜…。」
「…すみません。理解が遅くて…。」
「…違うっ。そうじゃ無いんだ。
…僕にも分からないんだよ…。」
「……え?」
「…悪い。変なことを言ってしまった。気にしないでくれ…本当に。」
「主殿…?」
…ワタシは何を焦っているんだろう?
──答えは明白だ。出掛ける…つまりこの家に問題がある。
…この家は、センカに取って居心地の良いものなのか?変化だらけで疲れたりはしてないか?
…もしも…この家がセンカに取って居心地が良いのなら──それは何故だ?
ぁあ…何故焦っている?ワタシはこの娘を追い出したい訳じゃ無いのに。
「…センカ。ワタシは君とどう接したら良いか分からない。」
「っ…!」
「…いや、君だけじゃない。村の連中…もっと言えばイチカとだって。どんな関係をどうやって築けば良いのか……分からないんだ。」
「…そうだ。家の暮らしだって、リディとでも暮らした方が以前に近い生活を送れる筈だ。ワタシは……」
「っ…。」
──“君とここで暮らしたい”と思っている。…その一言が言えない。どうして。
「…私は。」
「…。」
──言葉が出て来ない。…僕の焦りに彼女を巻き込んでしまった。なのに…彼女を気遣う言葉が、何も…。
「私は…きっと、オウコ殿が…良いんだと、思います…。」
「っ…。」
「オウコ殿がいて…イチカさんがいて♪この家に…私は住みたいんだと思います…♪」
「…そう。
…嬉しいって素直に喜べない僕で、申し訳ないね…。」
「ふふふ…♪」
「…?」
「あ、すみませんっ…。
…でも、オウコ殿が分からなくても、私はそんなオウコ殿と一緒だから安心なんだって思うんです…。」
「…良く、分からないな…。」
「…ぁはは、そうですよね…♪」
「…そう言えば、何時の間にか自然に笑うようになっているね…?」
「ぁ…はい!そうなんです!」
「え?」
「…きっと主殿が何時も自然に接してくれるから、私もそれに合わせられるんだと思うんです…♪」
「…そう言うものか…。
…そう言うものかもな。」
「フ…?ニャッ。」
「ふふ…♪にゃっ。」
センカ「にゃ、にゃー…?」
「猫語の挨拶だそうだ♪」
「へぇー…?ニャ、ニャッ?ニャッ??」
「……。」
センカをちらっと見てぷいっとそっぽを向くイチカ。
「あれぇ……。」
「…ふふ♪」
「…そう言えばここで暮らすと言う話だったな?」
「あ、はいっ!宜しくお願いします、主殿!!」
「ぁあうん、宜しくセンカ……主殿?」
「…あれ?」
…無意識かよ。ワタシの何処にそんな要素が…いや、考えまい。
「変じゃ…ありませんか?」
「変だ。…ただ、呼び名が変わると言うのは何か意味があるのだろうから、頭熟しに否定はしないよ。」
「…ふふ♪やっぱり安心します…☆」
目を閉じてゆっくりと尻尾を振るセンカ。
「そ、そう…。//」
…思わず斜めを向いて前髪を弄ってしまう。
…センカを猫だとは思っていないが…今のは猫的には“好き”と言うような意味のジェスチャーになる。…偶然の一致であって欲しい…。
「…。
イチカ、歯磨きだ!」
「ニャ?」
「主殿?……ふふっ♪」
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