猫メイド。

20/21
前へ
/57ページ
次へ
「…なぁ、センカ。何処かに行かないか?」 「はい?…買い物でしょうか?何なりとっ。」 「いや…そうじゃ無い。 んん〜…。」 「…すみません。理解が遅くて…。」 「…違うっ。そうじゃ無いんだ。 …僕にも分からないんだよ…。」 「……え?」 「…悪い。変なことを言ってしまった。気にしないでくれ…本当に。」 「主殿…?」 …ワタシは何を焦っているんだろう? ──答えは明白だ。出掛ける…つまりこの家に問題がある。 …この家は、センカに取って居心地の良いものなのか?変化だらけで疲れたりはしてないか? …もしも…この家がセンカに取って居心地が良いのなら──()()()()()()? ぁあ…何故焦っている?ワタシはこの娘を追い出したい訳じゃ無いのに。 「…センカ。ワタシは君とどう接したら良いか分からない。」 「っ…!」 「…いや、君だけじゃない。村の連中…もっと言えばイチカとだって。どんな関係をどうやって築けば良いのか……分からないんだ。」 「…そうだ。家の暮らしだって、リディとでも暮らした方が以前に近い生活を送れる筈だ。ワタシは……」 「っ…。」 ──“君とここで暮らしたい”と思っている。…その一言が言えない。どうして。 「…私は。」 「…。」 ──言葉が出て来ない。…僕の焦りに彼女を巻き込んでしまった。なのに…彼女を気遣う言葉が、何も…。 「私は…きっと、オウコ殿が…良いんだと、思います…。」 「っ…。」 「オウコ殿がいて…イチカさんがいて♪この家に…私は住みたいんだと思います…♪」 「…そう。 …嬉しいって素直に喜べない僕で、申し訳ないね…。」 「ふふふ…♪」 「…?」 「あ、すみませんっ…。 …でも、オウコ殿が分からなくても、私はそんなオウコ殿と一緒だから安心なんだって思うんです…。」 「…良く、分からないな…。」 「…ぁはは、そうですよね…♪」 「…そう言えば、何時の間にか自然に笑うようになっているね…?」 「ぁ…はい!そうなんです!」 「え?」 「…きっと主殿が何時も自然に接してくれるから、私もそれに合わせられるんだと思うんです…♪」 「…そう言うものか…。 …そう言う(畳で爪研ぎをしている)ものかもな。(イチカを見遣る。)」 「フ…?ニャッ。」 「ふふ…♪にゃっ。」 センカ「にゃ、にゃー…?」 「猫語の挨拶だそうだ♪」 「へぇー…?ニャ、ニャッ?ニャッ??」 「……。」 センカをちらっと見てぷいっとそっぽを向くイチカ。 「あれぇ……。」 「…ふふ♪」 「…そう言えばここで暮らすと言う話だったな?」 「あ、はいっ!宜しくお願いします、主殿!!」 「ぁあうん、宜しくセンカ……主殿?」 「…あれ?」 …無意識かよ。ワタシの何処にそんな要素が…いや、考えまい。 「変じゃ…ありませんか?」 「変だ。…ただ、呼び名が変わると言うのは何か意味があるのだろうから、頭熟しに否定はしないよ。」 「…ふふ♪やっぱり安心します…☆」 目を閉じてゆっくりと尻尾を振るセンカ。 「そ、そう…。//」 …思わず斜めを向いて前髪を弄ってしまう。 …センカを猫だとは思っていないが…今のは猫的には“好き”と言うような意味のジェスチャーになる。…偶然の一致であって欲しい…。 「…。 イチカ、(とんとんと)歯磨きだ(膝を叩く。)!」 「ニャ?」 「主殿?……ふふっ♪」
/57ページ

最初のコメントを投稿しよう!

11人が本棚に入れています
本棚に追加