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…へぇ~。アリアス王国のお屋敷から、ねぇ。これはスキャンダル…にもならないか。…アリアスのような大都会から見れば、シャンダラみたいな田舎はゴミ捨て場って訳だ?
「…良し分かった。センカ、この家で暮らしなさい。」
「えっ…?」
「君に何があったか完全に把握出来ていないから、ただの個人的な感情だ。勿論、君がどうしても国に帰りたいと言うなら止めはしないが。」
「…あ、の…」
「早く決めろとは言わないが、出て行くつもりなら早めに言ってくれるかい?食材を買ったりしないといけないからさ。」
「…」
「…ぁあ、すまない。誤解しないでくれ。
──ワタシは君の味方のつもりだ。…元の屋敷の方が居心地は良いかも知れないが、歓迎するよ。センカ♪」
…どうやら彼女は、王族に連なる貴族の家に生まれた使用人だったようだ。
下手すると…いや、彼女の方が間違い無く身分が上だろうね…尤も今はお屋敷をクビになり、こうして捨てられてしまったようだけど。
「ご両親もお屋敷か…。手紙でも書くかい?」
「…。」
首を振るセンカ。
「…そうかい。」
「…買い物が済んだら医者に行くつもりだけど。
…ところでその、左目の、眼帯は…。」
「…目が見えないんです。生まれ付き。」
「…そう。1人で大丈夫?」
「…はい。」
「…イチカー、センカに迷惑掛けちゃダメだぞ?」
「ニャア?」
センカ「…ふふ…♪」
「…僕にも仕事があるから、一日中君を見ていることはどうしたって無理だ。…それでも良いって言うなら一緒に暮らそう。
…出て行くつもりだとしても、落ち着くまではここにいなさい。」
「…はい。ありがとうございます…。」
「…じゃあ僕は買い物に出るから。…勝手に出て行ったりはしないでね?
…そう言うことも含めてちょっと話そうか。」
「えーっと…留守番は頼めるかな?
──うちは見ての通り鍛冶屋だ。と言っても客は専ら修理を依頼して来ることが多い。
…武器を持った怖そうな兄ちゃんが来るかも知れないが我慢してくれ♪」
「か…じや?」
「…参ったな。鍛冶屋を知らないのか?」
「…。」
鍛冶屋と言うのは武器や道具を作る商売だと説明してやる。
「…仕方無い。来客用のメッセージを書くから、誰かが来たらそれを見せること。良いね?」
後はー…そう、火元だ。メイドだし、火の扱いは出来るだろうか?工房は猫も通るし、危なくは無いだろうが…何が危ないかぐらいは教えとくか。
「…そうだ。名前を聞かれるようなことがあったら“センカ・アルティア”と名乗りなさい。」
「アルティア…?」
…アルティア家に獣人はいなかったとは思うが、そこまで考える必要も無いか。
「ワタシの親戚の家系だ。君はこの村に、いやこれから何処か行く為か?…兎に角親戚であるオウコお姉ちゃんを頼ってここに来た。
メイド服…は取り敢えず着替え…無理だ!」
「?」
胸のサイズが合う服が無い!と言うかそんなサイズが有り得るのか!?
…いや、そうじゃない。冷静に行こう。オーケー…?
「…そう。キミの本職はメイドだ。メイドが何故ここにいるのかは良い。
…兎に角何か聞かれたら“オウコお姉ちゃんを頼って来ました、鍛冶屋の仕事は分かりません”と答えて、後は書き置きに従って貰いなさい。」
「?はい。分かりました。」
「じゃあ…そうだ君、着替えは無いのか?」
「ゴミ箱には…」
「入って無かったと思うがね。
…寄り道になるが序でに買って来る。…すぅー…サイズを…。」
「?…ぁ…」
「良い、服を脱いでくれ。自分で測る。」
「えぇっ?」
「…ぁあ、しまった。つい……い、いや…自分で測ってくれ。巻き尺の見方は分かるね?測る部位は……」
「…しかし何だあのバケモノみたいな数字は…。」
バストに至ってはRカップだと…?僕なんてAAAカップだと言うのに…。
──あそこまでスタイルが良いと、職人としては創作意欲を刺激されて仕方が無い。…彼女の美を損なわずにその体を守る鎧。…それを作ってみたいと言うような、ね。…決して変な意味では…いや、充分変か。
「…あれで16歳だと…?まだ大きくなるのか…?」
──そこまで考えて、忘れていたことを思い出す。…そうだ、彼女は獣人だ。
…困ったな。ワタシはあまり獣人の生活習慣などに詳しくない。
…書店にも寄るべきだろうかなぁ…。
…いや、まだ一緒に暮らすと決まった訳じゃないからな。取り敢えずは今日と明日。足りない知識は本人に教えて貰えば良い。
──ヘルメットを被り“機車”に跨り、ペダルを踏み、隣街へ向けて発進する…。
────
センカ「…オウコお姉ちゃん?お姉ちゃん……女性…?」
────
「…はぁくしゅん!!
うぅ…。…?」
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