無題

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…依頼された仕事も今日で3日目か。 「フワァ…。」 今日は特に冷える。イチカも寒そうに体を丸めている。 「ぁああ…。」 流石に疲労も溜まって来た。首肩肘が痛い。あと腰。(歳かなぁ) …少し眠気はあるが、ゴリゴリと体を動かしてベッドから出る。 「おはようございます主殿。」 「ん。」 何時もより40分くらい早い起床。朝食の焼ける匂いを嗅ぎながら水を飲む。 …今朝は柳葉魚(コモチ)か。指より大きい程度の細長い魚だ。水分を飛ばして保存食として、多く売られている。 何と言うかカラッとしているが、多少脂がある所為か、不思議としっとりしてるように感じる。 内臓の苦味と、卵の甘味もあって、小さくても美味しい魚だ。 イチカ「ウム。ウマウマウマッ(がぶがぶ)」 …今、アウルー語を喋らなかったか?…いや、そう言うのは親バカと言う奴だろう。 「…あー寒い、ヨツバはまだか。」 「大丈夫ですか主殿…?」 『…。』 じっと動かず、囲炉裏の前で背中を丸めるペットと飼い主達。 …いかん、これでは待ってる間に眠ってしまいそうだ。 ──車庫で軽く体操でもしてから、“資料”にでも目を通すことに。 「ふふ…♪」 どうやらセンカは完成した鎧を見比べているらしい。 ──成程、胴鎧だけではあるが、そのサイズはまるでバラバラだ。ワタシに取っては見慣れた光景だが、センカに取っては不思議なのだろう♪ 「…ふ♪楽しそうだね?」 「あ…はい♪大きさは勿論、細かいカーブの角度などが全然違って…とっても奥が深いですっ。」 …うん、年頃の女の子の言うことじゃないなそれは。 「…ぁあ。そりゃまぁ使う人間がそれだけ違うんじゃないかな?会ったことないから分かんないけどさ。」 「お会いしたことが無いのに寸法が分かるのですか…?」 ツナギのポケットから紙を数枚(2種類)出し、センカに見せる。 その内片方は、オッグ村の鍛冶屋で測って貰った冒険者達の採寸履歴だ。 「ほら♪どんな鎧が欲しいかってのも同じようで皆微妙に違うだろう?♪」 …アンケートの質問は2つ。『どんな鎧が欲しいか』、『貴方の身体的特徴を教えて下さい。』 ──腰が弱かったり、肩が凝りやすかったり。よく不調、負傷を起こしやすい部位だったり。そう言う条件に合わせて鎧の形を微妙に変えている訳だ。 …ウチの店は女性からの評判がそこそこ良くて、オッグ村の鍛冶屋から仕事を回されることもあるくらいだ。 「鎧ってのは人の体に合うものでなくてはならない。例えば重すぎては戦士の足を引っ張ってしまうし、軽すぎても戦士の命を奪ってしまうことがある。」 「…戦士がどう思っているかは知らないが、彼らを1人で戦わせないのが鎧職人の仕事だと僕は思う。」 「鎧は所詮道具に過ぎないが、戦士と共に戦ってくれるものだ。仮令仲間が倒れようとも、鎧だけは彼らの味方でい続けなくてはならない。」 「…。」 「…すまない、少し語り過ぎた。」 「…主殿…」 「おはよーっ!」 …漸くヨツバが来たらしい。…そうだった、今日はワタシが早起きしたんだったな、忘れていた。(ちょっとくらい横になっとけば良かった…) 「…さて、仕事だ。」 防寒着(ドテラ)を脱ぐ。下は作業着(ツナギ)だ。
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