act.2 穂高

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  「お父さん……!この愛くるしい子は誰ですか……!」  デジカメで撮影された画像データをプリントアウトをしていると、父が歌劇団員に囲まれて鼻の下を延ばしているその横で、爽やかに微笑む青年が写っていた。釘付けになった。 「ああ、(ゆい)くん?ジャニーズ系でしょう」 「ゆい!?やっぱりこれも女性ですか!」 「唯くんは男の子だよー。このお店のスタッフでねー。バーテン君なんだけど面白い子なんだー。僕も(うらら)ちゃんも気に入ってるんだー」  ここ数年の父の道楽と言えば専ら桜坂歌劇団員の後援。日本全国、あちこちに出掛けて行っては観劇して、出演者と一緒に食事してうきうきした様子で帰って来る。もういい年だし何だって好きにすればいいが。母も年がら年中歌舞伎役者を追っかけているし。 「穂高くんのタイプですか」 「はい!!まったくの!!」
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