act.2 穂高

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   心から愛おしむ存在に『贈りたい』と思えるもの。相手の事情とか都合とか何も考えず、ただただ贈りたいもの。それはエゴの押し付けで間違いないんだろうが、俺はこの熊の人形を唯に贈りたい。 「男に贈るのはおかしいだろうか」 「ちっとも。イチゴやチョコレートがたっぷりのパフェが好きな男性もたくさんいるんだし、可愛いぬいぐるみが好きな子もいるかもね。それにまだ何も知らないんだから、試してみる価値はある」  自発的且つ能動的なアクションはリハビリに打ってつけらしい。たとえ唯が気に入ってくれなくても、次の贈り物の参考にすればいいだけだと。 「やっぱり年長者の言う事は説得力がある」 「恋をする若者は見ていて楽しいから」 「もう三十才だ」 「穂高は二十二才から時間が止まってたから、大学生くらいがきっとちょうどいいよ」 「そうなのか!」 「喜んでくれるといいね」  俺の唯は妄想の域を出ていない。だが、諦めようと思わない。自発的且つ能動的に唯の事をたくさん知りたいんだ。  熊と花を抱えて歩くのは初めての経験だ。今日はかすみ草だが重量は別にしてボリューム感が凄い。すれ違う人も注目している気がする。が、平気だ。今日は─────思い切って、店長に唯を呼び出して貰えないか尋ねるんだ。どうしても熊を渡したいから勇気を出して!
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